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自然エネルギーで発揮、ブラジル日系人に息づく開拓精神

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日系人のフロンティア精神、素晴らしいと思います。農業やこの手の領域では特に活躍が目立つようですね。「引退なんて考えたこともない。社会の発展に貢献したいんだ」というコメントも素敵です。

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■自然エネルギーで発揮、ブラジル日系人に息づく開拓精神

 アマゾンなどの森林を守りながら経済的な発展を目指すブラジル。エネルギーの確保はもちろん、環境保全の観点からも、化石燃料への依存軽減が必須の同国にあって、風力発電、バイオマス(生物資源)エネルギーの分野でそれぞれ、日系人技術者の奮闘が目立っている。起業して活躍する2人に共通するのは、新天地を求めた祖父母らの世代から受け継ぐ開拓者精神だ。

 「風力発電のブレード(羽根)は時速200キロ以上で回転しています。風を効率的にとらえるだけではなく、20年使い続けるものですから耐久性も重要です」――。

 サンパウロ市から西に65キロメートルほどのソロカバ市に本社工場を構えるのがベント・マサヒコ・コイケ社長(57)率いるテクシス。米ゼネラル・エレクトリックを始め米欧の風力発電機メーカーに羽根を供給し、羽根メーカーとして世界大手の1つとされる存在だ。コイケ社長の父親が空っ風で知られる群馬県出身というのは、奇遇だろうか。

 実はブラジルでは風力発電所の建設はまだ数えるほど。国内市場が無いブラジルでなぜ、全長50メートルの大型の羽根を製造する企業が育ったのか。鍵を握るのはブラジルが第2次世界大戦後に国策として取り組んだ、航空産業の育成だ。

 コイケ氏は国立大学の航空技術研究所(ITA)出身。同校はブラジル政府が航空機メーカーのエンブラエル設立に先立って、人材育成のために設けた大学。ブラジル随一の難関校として知られ、コイケ氏自身は材料工学が専門。現在の会社を設立したのは1995年だ。それまでは、自国政府の宇宙開発向けに素材開発する別の会社を経営していた。

 風力発電は実績ゼロからのスタートだったが、最初の顧客となったドイツ企業が「技術を正当に評価してくれた」ことから活路が開けた。2008年のリーマン・ショックでは市場の急激な縮小や、通貨レアルの乱高下による為替差損に見舞われるなど道のりは平たんではない。

 それでも「今年は米国市場が好調で、前年の倍の生産を予定している」と市場と自社の将来を信じて突き進んでいる。ブラジル北東部では新工場を来年にも稼働させる。繊維強化プラスチック(FRP)に代わる素材として、より軽量な炭素繊維を用いた羽根を開発するなど攻めの姿勢を休めない。

 航空産業と同様、ブラジルが国策として取り組んできたバイオ燃料。もともと石油危機時に原油輸入の抑制を図るために、サトウキビ由来エタノールの自動車用燃料への利用が打ち出されたのがきっかけだが、この分野でも日系人が新たな芽を育てようとしている。発電用に特化したサトウキビだ。

 サンパウロ市から北に約100キロ。カンピーナス市でサトウキビ品種改良・栽培の新会社「ヴィグニス」を昨年立ち上げた農業技術者のシズオ・マツオカ氏(67)。1968年から政府系機関などで一貫してサトウキビ研究に取り組み、地元紙では「ブラジルのサトウキビの父」として取り上げられたこともある人物だ。

 本人は「チームでやったことだから」と謙遜するが、同氏が率いた研究所はブラジルの多様な地質や気象条件に応じてそれぞれ対応する品種を生みだし、同国のサトウキビ増産に貢献してきた。

 政府系研究所を退いた後、いったんは同国大手財閥であるボトランチンの資金援助を得て、品種改良の研究会社を立ち上げた。だがこの会社が米種子大手のモンサントに売却されると、研究方針を巡り意見の相違も目立つようになり退職。契約に基づいて同業種への参入制限が解ける昨年、経営パートナーを得て新たな事業に取り組み始めたのがヴィグニスだ。

 事業化を目指す発電燃料用のサトウキビは、糖分をエタノールに加工するのではなく、直接燃焼させることを想定。糖分ではなく繊維質の多さがカギだという。植え付けの密度を高めるなどの工夫も加え「これまでのサトウキビより2.5倍、エネルギーを取り出す効率が高まる」見込みだという。

 まず今年から、40万種から選び抜いた品種の栽培を始めた。「順調にいけば2、3年後に商業生産を始められる」。当面はサトウキビの苗などを農家に売るのではなく、栽培したサトウキビ自体を工場などの自家発電向けに売るつもりだ。

 バイオ燃料は食料生産との競合も指摘される。だが燃料用サトウキビは、穀物や砂糖用サトウキビよりも劣悪な条件で栽培が可能で、競合を避けながら栽培を広げて、他の中南米諸国やアフリカで貧困削減の一助を担うといった将来像も想定できる。「引退なんて考えたこともない。社会の発展に貢献したいんだ」。

 コイケ氏もマツオカ氏も、日本生まれの父母が祖父母に連れられてブラジルに渡ってきた日系2世。仕事の上で日本とのつながりを意識することは無いという。だが異国の土地や社会と格闘しながら、自らの家庭と社会的な地位を築き、子どもたちの教育に心を砕いてきた父母世代の生きざまは彼らの心に刻まれているのだろう。

 日本でも自然エネルギー関連は以前から成長分野とされながら、起業家の活躍が広く目立つといった状況にはなっていない。国内の起業家への投資・育成の取り組みが不十分なことがよく指摘されるが、ブラジルも起業家を取り巻く環境が整っているとはいえない。なお広がる自然エネのビジネスチャンスをにらみ、国内の起業家やその予備軍も、ブラジルに長く息づいている開拓者精神を思い起こす必要があるように思える。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD2306Q_U2A520C1000000/