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サトウキビ畑が半永久的な“油田”に変わる!? 「燃料選択自由の国」ブラジルで快走する双日の挑戦

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バイオエタノールに対する双日の取り組み。最近リオ+20の影響もあるのか、この手の話題も多いですが、確かにブラジルのバイオ燃料領域は、進んでいますよね^^

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■サトウキビ畑が半永久的な“油田”に変わる!?「燃料選択自由の国」ブラジルで快走する双日の挑戦

 ハイブリッドカーと聞くと、どんな車を思い浮かべるだろうか。きっとガソリンエンジンと電気モーターを併用して走る車をイメージした人が多いはずだ。しかし、日本から見て地球の反対側に位置するブラジルでは、まるで事情が違う。エタノール100%、あるいはガソリンとエタノールを混合した燃料で走れる“ハイブリッドカー”が主流だからだ。

●40年前から“脱石油”を開始「燃料選択の自由」を得たブラジル国民

 サトウキビやトウモロコシを主な原料とする燃料「バイオエタノール」。CO2総量の増減に影響を与えない、半永久的に更新可能な、石油に代わる地球にやさしいエネルギー資源として注目されている。

 そんなバイオエタノールにブラジルが目を向け始めたのは、およそ40年前にさかのぼる。当時のブラジルは、油田を持ちながらも国内需要に追い付くほどの精製能力がなく、石油は輸入に頼る割合が高かった。そんななか起きたのが、1973年の第一次オイルショックだ。

 中東の情勢不安を背景に、輸入する石油価格は高騰。国はこれを非常事態と受け取り、高い石油輸入依存体質からの脱却策として『国家アルコール計画』を開始する。そして、石油に代わる自動車燃料として、国内で豊富に栽培されていたサトウキビ由来のバイオエタノール生産を活発化。エタノールで走る車も同時に開発された。しかしその後、原油価格の安定とともにこの計画は衰退してしまった。

 そんな中、再びエタノールが脚光を浴びる革命的な出来事が2005年に起こる。フォルクスワーゲンが、ガソリンとエタノールをどのような比率で混合しても燃料として使える『フレックス燃料車(FFV)』を発表したのだ。

 エタノールのリッター当たり走行距離はガソリンの約7割。人々はガソリンとエタノールの価格をよく比較し、どちらの方が得かを判断しながら燃料を購入することができる。トヨタやホンダなども生産に乗り出しており、今では新車の85%を占め、国内を走る車の約半数がFFVだという。その割合が今後ますます高まるのは間違いない。

 このように成長を続けるブラジルのバイオエタノール産業で、機を逸することなく事業を拡大する日本企業がある。それが双日だ。

●世界最大のサトウキビ生産国でブラジル最大の財閥とタッグ

 双日(旧・日商岩井)が最初にブラジルとの事業を始めたのは、もう60年以上も前のことになる。1950年代、現地企業ヴァーレ(旧リオドセ)の鉄鉱石を日本に輸入するビジネスを開始。その後、ブラジル国営石油公社のペトロブラスと大手コングロマリットのオーデブレヒト社と石油化学合弁会社を設立し、石油分野でも事業を拡大していった。

 しかし、石油資源だけに頼ることのできる時代は過ぎ去ろうとしていた。そこで、06年、双日エネルギー金属部門事業開発室(当時)に配属された粟屋聡・エネルギー開発部長は、再生可能エネルギーの開発に取り掛かるかかることになる。

「いろいろな研究をしましたが、将来性があるのはサトウキビ由来のバイオエタノールだと分かりました。しかも我々には、同分野において世界で最も競争力のあるブラジルと長年の関係がある。パートナーの協力も得られやすかった」(粟屋部長)

 バイオエタノール事業のパートナーとなったオーデブレヒト社は、元々ブラジルでゼネコンと石油化学分野で大きなシェアを誇っていたグループ。しかし、これからを見据えて“新たな柱”を欲しがっていた。そこで偶然、研究を進めていたのがバイオエタノールで、双日の思いと合致した。

 06年12月、両社は覚書(MOU)を交わし、07年7月3日にオーデブレヒト社がエタノール製造を行うETH(エーティーアガー・ビオエネルジア社)を設立し、事業を開始。双日は、それから4ヵ月後の10月末にETHの株式を取得して参入を果たした。

 ブラジルのサトウキビ生産量は世界一で、バイオエタノールの生産量はアメリカに次ぐ世界第2位。これからも成長する可能性を秘めるなか、今では5つのエリアで9つの工場を稼働させている。

●“バイオ燃料悪玉論”をものともしない?サトウキビが優れている3つの理由

 しかし、サトウキビをはじめとした植物由来のバイオエタノールというと、必ず議論の的になるのが「食とエネルギーの争奪戦」。飢えに苦しむ人々から食料を奪ってまで、エネルギーを作るべきかという“バイオ燃料悪玉論”が登場する。実際、日本では環境配慮の点から、バイオエタノール由来のプラスチック容器等を利用する企業もあるが、食との競合の面で取り扱いが非常にデリケートな問題だ。

 そうしたなか、サトウキビは食料でありながら、同じくバイオエタノールの原料となるトウモロコシやジャガイモと少し受け止められ方が異なる。なぜなら、サトウキビは“嗜好品”としての存在感が大きいからだ。また、ブラジルにおけるサトウキビを原料とした砂糖の生産量は世界の40%を占めており、食料としての役割はすでに十分に果たしているといえる。そのため、サトウキビ由来のエタノール生産へのイメージ的な抵抗感も大きくはない。

 それ以外の面でもサトウキビはエネルギー資源として非常に優れている。トウモロコシやジャガイモはでんぷん質でできているため、エタノールの元となる糖分を取り出すために糖化の作業を必要とする。一方のサトウキビは、絞った段階で糖分を取り出せるため、糖化の工程をスキップできるのだ。

「トウモロコシの糖化作業には約24時間かかるといいます。一方のサトウキビの発酵にかかる時間は8時間ほどです。それに、化石燃料を1投下したときにできるエタノールは、トウモロコシが2に対し、サトウキビは8~9。効率はサトウキビの方がはるかに高いんです」(粟屋部長)

 さらに、同社ではサトウキビの絞りかすをボイラーの燃料としているため、無駄がない。なんと大型の工場では130メガワットの発電が可能で、そのうちの30メガワットは自工場で使用、残りの100メガワットは外へ売電をしているという。

●2011年は“10年に1度”の干ばつに!天候リスクと戦う農業的側面も

 こう聞くと、ブラジルにおけるサトウキビ由来のバイオエタノール生産は良いことばかりのようにも思える。しかし、実際には様々なリスクも抱えている。最も大きいのが天候による影響だ。

 エネルギー産業と言っても、やはり“サトウキビ由来”の資源。実は農業の要素もあるのがこの事業の特殊なところだ。サトウキビは、「統計からみて比較的他の作物より天候リスクはマネジメントできる」(粟屋部長)作物であるものの、実際、昨年は干ばつに見舞われてしまった。

 ブラジルといえば、高温多雨な熱帯雨林をイメージする方が多いだろう。しかし、実際にサトウキビ生産に適しているのは、一般的に雨季と乾季のはっきり分かれているブラジル中南部。高温多雨の状態が続くと、サトウキビが育つ一方で、エタノールの原料となる糖分が蓄えられないからだ。

 ブラジルの1~3月は夏で雨季に当たる。この時期は、生育には適しているが刈り取りができないため、効率が落ちる。そのため、この時期をプラントのメンテナンスに充てるなどして、生産は休みに入る。したがって、ETH社でも生産は4~12月に行い、1~3月の安定供給のために在庫を工面する仕組みだ。また、サトウキビは多年草で、1度目の刈取りまでは基本的に18ヵ月かかるが、2年目以降5年目までは12ヵ月で刈り取れる。年間を通して安定的な供給を可能にするため、複雑なプランニングを行っているという。

 そうした事情のあるなかで、昨年は干ばつに見舞われてしまったが、そのリスクを軽減するために、様々な対策ももちろん行っている。その1つが、5つのエリアで9工場を配置するという「クラスター戦略」だ。

 5つのエリアに分けていることで、天候や土壌の違いによるリスクをヘッジできる。また1つのエリアには、基本的に2つの工場を配備。機械設備や農業器具、肥料等の集中購買、スペアパーツの共有、トラブル時などに原料サトウキビの融通等ができることで、集約化による競争力のアップを可能にしている。

●エネルギー産業では珍しい!?女性従業員が多く働ける職場

 安定的な生産を支えているのは、こうした戦略だけではない。1万3800人という現地従業員の力が果たす役割は大きい。24時間フル稼働、4直3交代制で生産は支えられている。

「税制の複雑さは世界一」と言われるなど、“ブラジルコスト”が問題視される市場であるが、実際に働くブラジル人従業員は、親日感情を持つ勤勉な人が多い。「若い人はワーカホリックな人も少なくない。時間にもルーズそうなイメージがあるが、実際には時間も守って出社してくれる」(粟屋部長)という。

 さらに注目すべきは、女性従業員の活躍だ。サトウキビ生産の刈り取りは、伝統的に重労働となる手刈りによって行われてきた。サトウキビの葉は鋭いため、作業中に手を切ることも多かったそうだ。しかし、同社では創業時から刈取りの機械化率を100%にして、力のない女性でも作業を安全に行える配慮をしている。

 実際、事故に関しては、業界平均では100万労働者時間あたり40件なのに対し、同社は直近で1.7件。07年の創業当時は他社並みだったというから、この数年での徹底した従業員教育や安全性に向けた仕組みづくりを行った成果が表れ始めている。

●「原子力」を選んだ日本と「サトウキビ」を選んだブラジルの未来は

 同社は、農地を年間10万ヘクタールずつ拡大中で、最終的には50万ヘクタールにしたいと意気込む。2011年度の売上は800億円だったのに対し、12年度1300億、13年度2100億円を見込んでいる。そして、2014、15年にはサトウキビ由来のエタノール生産量世界一になる予定だ。

 日本では再生可能エネルギーとして、“原子力”が選択されてきたこの50年。一方、地球の反対側に位置する南米の国・ブラジルは、“サトウキビ”を新たなエネルギー資源として選んだ。日本への輸出にはまだまだハードルが高いようだが、エネルギーの転換を迫られる今、未来のエネルギー技術がすでに日本企業の手の中にあることは注目に値する。

http://diamond.jp/articles/-/20237