ビッグマックが語る金融危機後の5年間 日本円の対ドルレートは意外にも割安
ビッグマック指数の最新版が出ましたね。この記事では明言されていませんが、ブラジルは世界で4番目の水準。やはり高いですね。そして通貨価値は上がっている、と。
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■ビッグマックが語る金融危機後の5年間 日本円の対ドルレートは意外にも割安
今年もまたビッグマック指数の季節がやってきた。例年は、ハンバーガーの値段を基に各国の為替レートを比べて楽しむ、というだけの企画だった。しかし今年は、2007年夏に国際金融市場が行き詰まってから5周年という、残念な節目の年に当たる。
「ハンバーガーの経済」から何が見えてくるだろうか。現在の為替レートについて、そして、この5年間の困難な時期――信用危機からユーロ危機に至る――が各国の通貨に及ぼした影響について見る。
●現在の指数は西高東低
ビッグマック指数は、各国の通貨が現在の為替レートよりも割高か割安かを測定するために、本誌(英エコノミスト)がハンバーガーの値段を使って算出する指数だ。この測定方法は、購買力平価説に基づく。
購買力平価説によると為替レートは、同じ品目が同じ料だけ入った“バスケット”の価格が各国で同じになるように収れんする。本誌は、このバスケットに、マクドナルドのビッグマックを1つだけ入れる。ビッグマックは世界中ほぼ同じ品質で販売されている。
つまりビッグマック指数は、ビッグマックの価値が各国で同じとなる為替レートを示す。ロシアのルーブルとブラジルのレアルを例に取ろう。米国で4.33ドルするビッグマックが、ロシアでは75ルーブル――現在の為替レートで2.29ドル――しかしない。ブラジルでは10レアル――5ドルをわずかに切る値段――で売られている。つまり、ロシアでは、同じ米ドルでよりたくさんのハンバーガーが買える。ルーブルは割安なのだ。いっぽう、レアルは割高ということになる。
●割高ならば良いというものではない
主な国の通貨をグラフで示す。
最新のビッグマック指数を見ると、ブラジル・レアルを含め、現在の為替レートが割高と思える国がいくつかある。欧州の先進国(いずれもユーロ圏に属さない)が上位を占める。割安の側に目を移すと、日本円、英ポンド、加ドルが安いようだ。しかし米ドルで最も多くのハンバーガーを買えるのはアジアの国々だ。中国、インドネシア、香港の通貨は、いずれも40%以上過小評価されている。
各国の通貨価値は5年前の危機勃発以降、大きく変動した。豪ドルは強くなり、14%の割安から8%の割高に転じた。十分な自己資本を有していたオーストラリアの銀行は、危機の初期段階で非常に強い回復力を示した。最近の豪ドルの価値は、コモディティー価格の急騰と中国への好調な輸出が後押ししている。
日本とブラジルの通貨価値も5年前から上昇した。
そのほかの国の通貨価値は下落した。英ポンドにかつての面影はない。2007年には18%割高だったが、現在は4%の割安だ。英国はオーストラリアと正反対の道をたどった。英国経済の大きな部分を占める金融業界は金融危機の真っただ中にあった(ポンドの価値は2008年に急落した)。最大の輸出先であるユーロ圏の市場は大幅に冷え込んだ。
しかし、ビッグマック指数が低いことは、必ずしも悪いことではない。ある国(A国)の通貨価値が割安になれば、外国(B国)から見て、その国(A国)からの輸入品が魅力的になる(本誌注:Aから輸入した商品の価格がB国において相対的に下がる)。この指数が下がれば、理論上、(A国の)純輸出は増える。中国はまさにこの理屈に基づいて通貨を管理している。人民元を安く抑えることで、元建て輸出の需要を高めているのだ。
さて、エコノミストたちが今いちばん見たいと願っている為替レートの変動は、ユーロの価値の大幅な下落だ。ユーロ圏、特にスペインやギリシャなど体力の落ちた周縁国は、通貨安というカロリーたっぷりの食べ物で力をつけたいと切実に願っている。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20120731/235132/