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VW「50万円車」の破壊力


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ブラジルの「下位中間層」をターゲットに超低価格車の投入。この動きは自動車メーカー各社にとってはしんどいかもしれませんが、消費者にとっては嬉しい話ですね。しかしそうなると、ますます自動車台数が増え、渋滞が増えてしまいますね…

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■VW「50万円車」の破壊力

独フォルクスワーゲンが、新興国で50万円前後の超低価格車を投入する見通しだ。ブラジルで開催中の「サンパウロ・モーターショー」で、同社幹部が明かした。低調な世界景気を受け、“価格破壊”でクルマ消費を喚起する動きが加速しそうだ。

 欧州最大の自動車メーカー、独フォルクスワーゲン(VW)が新興国を中心に、価格が50万円前後の超低価格車を発売する見通しとなった。

 ブラジルで10月22日に開幕した「サンパウロ・モーターショー」を視察中のVW研究開発担当のウルリッヒ・ハッケンベルク取締役らが、現地で本誌記者などに明らかにした。同氏は、「中国では現地メーカーなどが6000ユーロ(約63万円)前後の自動車を販売するなど、従来の小型車よりも安い超低価格車の市場が(新興国)各国で立ち上がりつつある。VWも、この分野への参入を検討中だ」と語った。

 また、VWブラジル法人社長のトーマス・シュマル氏は、「ブラジルでは中間所得層の中でも、低所得層に近い『下位中間層』の人口が今後10年で約2倍になる。この領域に対応する価格帯のVW車はまだないが、我々はこれからの成長領域に位置づけている」とし、独本社による超低価格車市場への参入の決定が近いことを示唆した。

●2020年には15億人超の市場に

 現在、ブラジルで最も安いVW車「ゴル」は、ベーシックモデルで2万6690レアル(約105万円)。ハッケンベルク氏は超低価格車について、一般的に「自社の(最安値モデルの)半値が相場」としており、50万円前後となる可能性が高い。この下位中間層向けモデルでは新ブランドを立ち上げ、「VW」など既存ブランドと差異化するもようだ。

 ブラジルや中国など新興国では、世帯年収が5000~1万5000ドル(約40万~120万円)の下位中間層の人口が2010年で14億1000万人に達している(経済産業省・新中間層獲得戦略研究会の「新中間層獲得戦略」から)。2020年には15億1000万人まで増える見込みだ。この層は、従来の低価格車でも所得面から手が届きにくかったが、VWのように思い切って価格を下げれば、クルマ需要が一気に盛り上がる可能性を秘めた層でもある。

クルマ需要の裾野はより広く

 VWが、超低価格車の投入をブラジルで明かしたことは偶然ではない。

 下位中間層が人口の多くを占めることに加えて、車両価格の3~4割を税金が占めるため所得に比べて自動車が割高。このため、以前からVWや伊フィアットなど小型車に強いメーカーのシェアが高かったが、それでも約2億人の人口に対して新車販売台数は年間340万台と、クルマの普及余地はまだまだ大きい。さらに、今後数年でサッカー・ワールドカップやリオデジャネイロ五輪が開かれ、中期的な経済の下振れリスクは比較的小さい。超低価格車を試すにはうってつけと言える。

 ブラジルで反転攻勢に出た直後だった日本勢も、戦略の軌道修正が必要となるかもしれない。トヨタ自動車は9月下旬に同国で戦略小型車「エティオス」を発売したが、価格は2万9990レアル(約117万円)から。VWの現行の主力車種ゴルよりも高い。

シェアで見劣りする日本勢

 米系調査会社J・D・パワー・ド・ブラジルによると、現地のブランド別顧客満足度ではトヨタを筆頭に日本勢の評価が高い。これに対し、VWは平均以下。だが、超低価格車によって圧倒的な価格差がつくとなると、日本メーカーのシェア向上はますます遠のく。サンパウロ・モーターショーを訪れたホンダの伊東孝紳社長は「インドで100万円を切る価格で販売する『ブリオ』の派生車をブラジルに投入する。現地の研究開発拠点を強化するなど、徹底した現地化によって低コストを実現する」と力を込める。

●ダットサン、2年後で間に合うか

 そもそも、1万ドル(約80万円)を切るような超低価格車はインドのタタ・モーターズなど新興国メーカーが主導するとの見方が多かった。だが、欧州危機によって欧州メーカーは母国市場で販売不振に陥り、成長を維持するためには新興国での収益拡大のピッチを速めることが不可避となってきた。

 VWが超低価格車に意欲的なのは、仏ルノー傘下の低価格ブランド「ダチア」が欧州を含む世界各地で成功を収めていることに触発されたためとの指摘もある。世界的に景気の力強さが欠ける中、販売台数を確保するために、欧州勢を中心にクルマの“価格破壊”が前倒しで進み始めたようだ。

 クルマを機能ごとの大きな部品の集合体と見なし、組み立て玩具のように造る「モジュール化」の広がりで、生産コストが大きく下がり始めていることも後押しする。

 VWは日本勢の牙城であるインドネシアでも、1万ドルを切る小型・低燃費車を準備しているもよう。迎え撃つトヨタと傘下のダイハツ工業は、年内に80万~100万円の新モデルを投入する見通しだ。同国では、日産自動車がこれまで存在しなかった1万ドル以下の市場に照準を定めて新ブランド「ダットサン」の発売を2014年に予定しているが、日産が先行者メリットをフルに享受できるかも不透明になってきた。

 現在のところ、自動車メーカー各社にとっての主戦場は、1万ドル以上の自動車を購入できる「上位中間層」である。各社ともこのセグメントの品揃えを最も充実させている。サンパウロ・モーターショーでは、そうした価格帯の新車発表が相次いだ。

 トヨタは、来年初頭にHV(ハイブリッド車)「プリウス」をブラジルで発売し、ホンダは小型車「フィット」のブラジル専用モデルを近く投入すると発表した。VWは3ドア仕様の新しいゴルを、韓国・現代自動車は小型車「HB20」の5ドア仕様車などを、それぞれお披露目した。

 だが、今後は1万ドルを切る超低価格車がこうした上位モデルの需要を侵食して、大衆車全体の“価格破壊”を引き起こす可能性がある。そうなれば、世界の自動車業界は一段と体力勝負の様相を呈することになる。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20121026/238639/