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現代の神話を紡ぐ、ブラジル現代写真


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資生堂ギャラリーで開催中の写真展「神話のことば ブラジル現代写真展」の話。確かにこの多様性の国ブラジルを撮った様々な写真となると、とても興味深いですね。どんな素敵な写真があるのか、僕も見に行ってみたいところです。ご興味ある方はぜひ足を運ばれてみてはいかがでしょうか。

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■現代の神話を紡ぐ、ブラジル現代写真

ブラジルと言えば、まずはサッカー。そして、サンバやボサノヴァの陽気なイメージ、映画『シティ・オブ・ゴッド』のような激しさ、パウロ・コエーリョの小説『アルケミスト』にあるような不思議な世界……。挙げただけでも一貫しない。それもそのはず、ブラジルは、20世紀の初めから世界各地の移民を受け入れて発展してきた多人種・多民族国家だ。さまざまなバックグラウンドを持つブラジル人たちは、メスチッソ(混血人種)としてのアイデンティティを作り上げてきた。

しかし、一見バラバラのように見える文化のの根底には、土地に根ざした風習、宗教や荒々しい自然からの影響を汲んだ「神話性」ともいうべき、大きな物語が潜んでいるのだ。

現在、資生堂ギャラリーで写真展「神話のことば ブラジル現代写真展」が開催中だ。参加する7組のブラジル人作家は、30代~80代と非常に年齢に幅がある。本展のゲストキュレーターを務めるブラジル人キュレーターのエーデル・シオデッドは、彼らの写真についてこう語る。

「写真の世界では、1950年代からドキュメンタリーフォトの分野において、ブラジル人の多様性を探る試みがされてきた。マルチカルチュラリズム(多文化主義)、そして風土や気候、動植物相からの影響は、本展でセレクションされた写真家たちのように作家たちのドキュメンタリズムと実験主義的な作品において重要なテーマとなっている」

冒頭の2点は、クラウディア・アンデュジャールの作品。1931年生まれで今年81歳になる写真家だ。スイス人の母とハンガリー人の父を持つ彼女はスイスに生まれ、幼少期はルーマニアとハンガリーで過ごし、第2次大戦中は母とオーストリアに避難した。ハンガリー系ユダヤ人の父はナチに拘束されキャンプへと送られてしまう。戦後にアメリカに移住し、ニューヨークの大学で人文学について学んだアンデュジャールは、1956年に自身のプロジェクトを行なうためブラジルへと移り住み、現地の先住民族の写真を撮り始め、「Life」や「Fortune」「Aperture」等の雑誌にフォトジャーナリズム作品として寄稿する。

彼女がヤノマミ族に出会ったのは、1970年代初頭。ヤノマミ族は、アマゾンの熱帯雨林からオリノコ川にかけて住む先住民族であり、狩猟と採集を主な生活手段とし、神や精霊と非常に近接な生活をしており、祭礼や儀式が日常の一部になっている。アンデュジャールの作品では、その場で行われている儀式を単に記録するだけではなく、長時間露光やオイルランプなどを使い、ミステリアスなヤノマミ族の儀式に漂う「空気」を可視化する。それは、演出のひとつと言えばそうなのだが、彼女が現地で感じた目に見えない「何か」を、決して過剰ではなく、映し出す試みがなされている。

 ジョアン・カスティーリョは若手で注目されている写真家の一人である。彼は文学部を卒業した後に、ヴィジュアルアートで修士を修めたという経歴を持つ。映画のシーンの一部を切り取ったような作品の背景には、文学作品との対話がある。

 こちらの作品《無題 「旋風」シリーズより》シリーズでは、作家ギマランエス・ローザの古典短編『大いなる奥地』を読み、自然界の悪魔の存在を伝承する神話の再解釈に挑んでいる。

 ホドリゴ・ブラガの映像作品も興味深い。彼は自然と文化の衝突をテーマにしている。映像の中で、彼はひたすら穴を掘る。1本の大樹をその中に埋葬する。それは種の保存のためなのだ。1本の大樹を保存するために土に埋めてしまうという、ともすればばかばかしくも思われるダイナミックかつ理不尽な行為を通して、彼は、自然と文化の狭間における不条理を説く。

 こちらも映像作品である。シア・デ・フォトは2003年に設立された、写真制作を行なうグループであり、さまざまな作品を生み出している。この映像は、一見なんだかよくわからないかもしれないが、海に指す一筋の光である。これは、リオ・デ・ジャネイロの町に隣接する海で撮影されており、高いビル群がそびえ立つほんの少しの隙間から、まるでモーゼの海割りのように鋭い光が差す。その光は非常に神秘的なものであるが、同時にビルで覆われて光が見えないという状況も映し出す。果たして、人と自然は調和できているのだろうか。考えさせられてしまう。

 人や町と非常に近いところに自然があり、多種多様な民族の歴史で構成されたブラジルという文化。ネオ・マジックリアリズムとも言えるドキュメンタリーとイマジネーションの交錯は、複雑な移民の歴史を抜きには語れない。現在ブラジル国内には150万人の日系人がおり、その数は世界最大だそうだ。その複雑にミックスされたアイデンティティの一部に、私たち日本のDNAもきっと感じられるであろう。偏在する神の存在とともに。12月23日まで。

「神話のことば ブラジル現代写真」
会場:資生堂ギャラリー
中央区銀座8-8-3
東京銀座資生堂ビル地下1階
TEL : 03-3572-3901
時間:11:00~19:00・~18:00(日・祝)
休館日:月

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