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コラム:ブラジル通貨安政策のジレンマ=村田雅志氏


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ブラジルレアルの状況が丁寧に解説されています。政策金利、インフレ、GDP成長率、消費者物価指数…さて、今後はそれぞれがどう推移していくでしょうかね。引き続き動向は気になるところです。

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■コラム:ブラジル通貨安政策のジレンマ=村田雅志氏

村田雅志 ブラウン・ブラザーズ・ハリマン シニア通貨ストラテジスト

[東京 13日 ロイター] ブラジルレアル(以下レアル)が11月以降、対ドルでの動きを大きくしている。レアルは9月から10月末まで1ドル=2.01―2.04のレンジ内で推移していたが、11月半ばには2.08ちょうど近辺まで下落。同国のマンテガ財務相が11月23日、レアル安の動きを容認する姿勢を示すと、下値の目安とされていた2.10を突破し2.11台後半まで一時急落した。

その後、ブラジル中央銀行が通貨スワップを通じたドル売り介入を実施したこともあって2.08台で落ち着きを見せたが、11月30日に発表された同国の第3四半期の国内総生産(GDP)が前年同期比0.9%増と市場予想を大きく下回ると、2009年5月上旬以来のレアル安水準である2.13台後半まで下落した。

しかし、週明け12月3日には2度にわたり計21億ドル相当のドル売り介入を実施。ブラジル政府が6%の金融取引税(IOF)の対象となる外国からの融資の満期を従来の2年以内から1年以内に短縮すると発表したことで海外からのレアル建て融資が増えるとの見方も強まり、2.07―2.08付近で落ち着いた動きとなっている。ブラジル当局によるレアル安容認姿勢は、国内景気に対する危機感の表れと見ていいだろう。

これまでのブラジル当局であれば、恐らく利下げによって個人消費の拡大を目指していた。しかし、同国中銀は昨年8月末から利下げを続け、今年10月までに政策金利を12.50%から7.25%まですでに引き下げている。この結果、個人消費は第3四半期に前年同期比3.39%増と堅調な結果となったが、11月の同国自動車販売が前年同月比3.0%減を記録するなど個人消費が鈍化する兆しも見られる。

家計向け銀行貸出は貸倒率の高止まりを背景に減速傾向が続いており、これ以上、利下げを続けても個人消費の押し上げ効果は限定的となる可能性が強まっている。一方、利下げにより落ち着きを見せていたインフレ圧力が再び強まるリスクもある。ブラジル当局は、さらなる利下げに対して慎重にならざるを得ない。

一方で、輸出の低迷を通じた製造業景気の悪化が目立っている。第3四半期の輸出は前年同期比3.22%減と2四半期連続の前年割れを記録。業種別にみると製造業が同1.76%減と5四半期連続の前年割れを記録しており、輸出の低迷が製造業の景気を下押しする構図となっている。また、10月の鉱工業生産は前年同月比2.3%増と13カ月ぶりの前年超えとなったが伸びは低いまま。ブラジル当局としては、輸出や製造業に直接働きかけるレアル安政策を進めたほうが合理的といえる。

<当局の想定レンジは1ドル=2.05―2.10か>

しかし、ブラジル当局が行き過ぎたレアル安を望んでいないのも事実だ。11月のブラジルIPCA(消費者物価指数の一つ)は前年同月比5.53%増と同国中銀が定める目標レンジ(4.5%を中央値として上下2%ポイント)の範囲内に収まったものの、6カ月連続で上昇した。

内訳を見ると、伸びが高まりやすい傾向にある食品・飲料価格だけでなく、住居や衣服など広範囲にわたってインフレ圧力の強まりが観測される。こうした状況下でレアルの下落が進み過ぎると、輸入物価の上昇を通じてインフレの加速ペースが拡大する可能性が高まる。

また、レアル安期待が強まると、同国の経常赤字をファイナンスする海外からの直接投資が縮小するリスクも高まる。ブラジル当局はレアル安を進めることで製造業をサポートしたいが、行き過ぎたレアル安には歯止めをかけたいという(やや都合のよい)意向を持っていると推察していいだろう。

実際、11月以降、2.04台のときにレアル高をけん制する口先介入を始める一方で、2.10を超えるとドル売り介入などでレアル安を抑制している。つまり、当局の事実上の目標レンジは、1ドル=2.05―2.10ということなのだろう。しかし、彼らが望ましいと考えるレアルの水準は同国景気の状況次第であり、今後さらに景気の減速感が強まれば、レアルをさらに下落させようとする可能性もある。

ブラジル景気の先行きは楽観視できない。同国中銀の最新の週次サーベイによると、13年の成長率見通しは3.50%と4週連続の下方修正となり、政府が目標にしているとされる4.0%を下回る結果となった。上述したように家計向け銀行貸出は減速が続いているほか、雇用の拡大ペースも鈍化している。小売売上高も減税が延長された自動車を除くと伸びが弱く、自動車などに対する減税措置が終了する13年に個人消費が失速する展開も考えられる。輸出についてはレアル安の効果や底堅く推移する米国景気への期待感があるものの、ブラジル最大の輸出国である中国の景気回復ペースは緩慢で、対中輸出が短期に急拡大するとは見込みにくい。

レアルの実質実効為替レートは12年10月時点で86.9と、09年5月以来の水準まで低下しているが、インフレターゲットを導入した99年7月以降の平均に対し依然として3.7%程度のレアル高水準にある。仮にブラジル当局がレアルの水準をさらに3%程度引き下げようと考えると、レアルのレンジは1ドル=2.10―2.15程度に上方シフトすることになる。

ブラジル当局によるレアル安誘導は、輸出の拡大を通じた製造業支援策の一つと考えられることから、輸出や製造業関連の経済指標が相場の先行きを占う上で重要となる。月初に発表される鉱工業生産や製造業購買担当者指数(いわゆるPMI)に加え、毎週発表される貿易収支の動向がレアル相場に大きな影響を及ぼすと予想される。

*村田雅志氏は、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのシニア通貨ストラテジスト。三和総合研究所、GCIキャピタルを経て2010年より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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http://jp.reuters.com/article/jp_BRICs/idJPTYE8BC01Z20121213