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海外生産加速で鴻海精密に課題


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フォックスコンのジュンジアイ工場でのストライキの話、1つの興味深い事例ですね。何も「社員食堂の料理が気に入らない」というころに本質があるわけではなく、その経営管理手法については、グローバル展開をしかける企業にとって、参考になる点も多々あるのではないかと思います。というわけで、もっと詳しく掘り下げて欲しいですね。

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■海外生産加速で鴻海精密に課題

米アップルの「iPhone」や「iPad」の生産受託で知られる台湾の鴻海精密工業。中国の低賃金労働力が成長の源だったが、近年、海外生産を加速している。モーレツな経営手法を押しつける同社のやり方では衝突が避けられない。

 ブラジル南東部に位置する殺風景な工業都市ジュンディアイ。この町にある台湾のEMS(電子機器の受託製造サービス)世界最大手、鴻海(ホンハイ)精密工業の生産子会社フォックスコン(富士康科技)の工場で昨年10月、数千人の従業員が抗議集会を開いた。

 中国における同社の工場では、ストレスの多い労働環境や長時間労働が原因で暴動が多発、自殺者まで相次いだが、ブラジル人労働者の不満の内容は少し違った。社員食堂の料理が気に入らないということだった。

 同社は現在ブラジルに積極進出を図っており、政府関係者によればその投資額は120億ドル(約1兆520億円)に上る可能性がある。同社はこれまで米アップルの「iPhone」や「iPad」を主に中国工場で受託製造してきたが、中国製の電子製品にかかる輸入関税を回避すべく、最近はブラジル工場でも多くのアップル製品を生産している。

●中国外では通用しない管理体制

 ブラジルは歴史的に労働組合の力が強いことから、同社の新工場は様々な問題に直面している。従業員6000人のジュンディアイ工場では、10月の抗議行動だけでなく、通勤ラッシュや労働時間への不満、社員へのキャリアプランが提示されない点など、あらゆることについて抗議行動が起きている。

 「この辺りでストライキはめったに起きない。つまり、フォックスコン固有の問題があるのではないか」とジュンディアイ市長室のある職員は話す。

 何十万人もの若者を工場に集め、アップルのスマホから米デルのサーバーまで様々な電子機器を量産するフォックスコンは米国から東欧、中南米に至るまで海外での生産を進めている。

 先日も主要顧客であるアップルのティム・クックCEO(最高経営責任者)が米国内での調達を増やす計画だと発言すると、フォックスコンも米国での事業拡大を検討中であることを認めた。

 同社が海外生産を進めれば、顧客企業にとっては関税を一部回避できるうえ、納期も短縮できる。今や同社は従業員数が全世界で100万人を超え、2011年度の売上高は3兆4500億台湾ドル(約10兆円)、純利益は816億台湾ドル(約2500億円)に達した。だが、一方で新たな問題にも直面している。

 フォックスコンは顧客企業の古い工場を買い取って、これを立て直すことで新しい国に進出してきた。だが厳しい管理で有名な同社の経営スタイルが、これまで慣れ親しんできた中国の工場とは全く異なる文化の地に当てはめられると、衝突が生じる。

 同社の米国工場に勤めていたある元シニアマネジャーは、「彼らは中国でやってきた経営スタイルをそのまま展開したがるが、ここではうまくいかなかった。組織構造が非常に独裁的で、一部の者にとっては屈辱的にもなり得る」と話す。

 だが、経営格言に「過酷な環境こそ良い」という一節を持つ創業者の郭台銘董事長にとっては、そうした不協和音は勝手知ったる戦場だ。

 郭氏が同社をアップルのような大企業にとって望ましい組み立て企業に育て上げることができたのは、規模と精密さと順応性の点で、世界で無敵となれるよう自分自身と社員に十分すぎるほど求めてきたおかげだ。

 そのため中国においてさえ労働者が自らの権利に徐々に目覚めてきたことで、衝突が起きている。河南省鄭州の工場では昨年、従業員が「iPhone5」のアルミ部分の傷をなくすよう品質管理担当者に厳しく要求されたことから暴動が発生。過去の自殺者続出に加え、昨年は別の暴動も起きたため、同社の労働慣行への国際的非難が高まっている。

 同社は今も中国で新工場の建設を続けているが、海外にも目を向けている。最近ではブラジルやメキシコ、トルコに投資し、今後は米国やインドネシア、マレーシアでも建設を計画中だ。

 「多くのEMS企業がグローバル戦略から海外における現地生産を始めている。これは10~15年前とは全く異なる戦略だ」。米マサチューセッツ工科大学(MIT)教授で、サプライチェーン・マネジメントが専門のデイビッド・スミチレビ氏は解説する。

●チェコでは既に輸出企業第2位

 前述の通り、フォックスコンの工場が中国国外にあると顧客企業は、輸送費が削減でき、多くの輸入関税を回避できるうえ、納期も短縮できる。デルなどは、法人を対象に特別な設定が必要なコンピューターを販売することもあるかもしれない。

 フォックスコンの欧州幹部は、「我々が欧州に進出しているのは、顧客にサービスを提供するためだ。だから我々は最終組み立てを国際的に行っている」と話す。

 同社の海外展開は新しい取り組みというわけではない。チェコでは既に第2位の輸出企業であり、チェコと米国には10年以上前から進出している。その事業の多くは、ソニーや米ヒューレット・パッカードといった顧客企業から工場を買収することで始まった。こうした消費者に近い電子機器メーカーは、自社生産を減らすことでコスト削減を望んでいた。

 もっとも多くのアナリストは、生産の一部を米国に戻すというクック氏などによる要請はあるものの、フォックスコンの生産活動の大部分は今後も中国で行われると見る。中国の豊富で安い労働力こそが同社の特色だからだ。

 海外には最低賃金法があり、生活費も中国に比べ高い。そのためフォックスコンは、非中国人労働者により多く払う必要がある。例えば、ブラジルの最低月額賃金は550ドル(約4万8000円)に対し、同社鄭州工場の同基本給は約300ドル(約2万6000円)で済む。

 社員への取材や公式発表によると、同社の社員120万人のうち、中国本土及び本社がある台湾以外の地域にいる社員はわずか数万人だ。

 ブラジルなどでは時折ストライキが発生しているが、同社の海外事業は概して中国で起きたような暴力的な衝突は何とか回避できている。

●現地スタッフ登用で文化融合図る

 同社の海外業務に詳しい関係者によれば、海外工場の管理職の過半数を現地のスタッフにすることで、文化の違いは若干緩和されているという。同社は、「当社は現地の文化をよりよく理解するために、生産ラインの労働者でも上級幹部でも、社員の現地化に努めている」と説明する。

 フォックスコンが建設または投資した工場やそこで働く労働者にとって、同社の傘下に入るプラス面もある。

 米モトローラから買収されたメキシコの工場で働いていたあるエンジニアは、フォックスコンはコストを削減(出張での高級ホテル利用の禁止、施設の景観に過度にお金をかけないなど)しただけでなく、売り上げ向上のために新プロジェクトに挑戦するより大きな裁量権も与えてくれたと言う。

 フォックスコンの米国支社に10年近く勤めたあるマネジャーは、社内で異文化間のバランスを取らねばならないストレスはあるが、グローバルな事業展開と、進出先の顧客企業との連携を各現地の社員に頼れることが、同社に相当な強みを与えているとこう話す。

 「フォックスコンが進出先で何か商売の契約を取りたいと望めば、進出先の現地の社員はあっという間に結束し、その契約を取ってくる。それがスムーズにできるかと言えば、多分そうはいかないだろうが、それでも必ず契約を勝ち取ってくる」と。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20130109/242013/